時の間
『涼くん・・・やばいよ。 
普通じゃないって!!
逃げようよ。』





『う・・・うん。』





少し後ずさりつつも目が離れない。



バッグを投げてきた声の主も
気になるところだが、
それどころでもない。



(やっぱり・・・
あの空間だけおかしいんだ。
もし、バッグが飛んでこなかったら、
僕が今のバッグのようになってたかもしれない。)





だんだん恐ろしくなってきた・・・。





僕は、
歪んでいるのはそう見えているだけで
その場から移動させれば元に戻るだろう
と安易に考えていた。



ストーブや焚き火の
上部の空気(空間)が
ゆらゆら歪んで見えた事が
ある人は多いだろう。




陽炎(かげろう)というやつだ。




当然、電車内でそんな事が起こるはずはない。



だが、



(なんらかの理由で
そんな現象が起きたとすれば・・・。)



などと、安易に考え女性の元へと近づいてしまった。


今、起きている現象を見れば
一目瞭然!!


僕の考えはいとも簡単に打ち砕かれる。


歪んでいるように見える事はあっても、
空中に浮く事は決してない。




そもそも、
飛んできた物が空中で急停止し
歪みながら浮かび続ける
そんな事がありうるんだろうか??



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