時の間
慌てて振り返ってみると、
人込みの中に怜香の姿をみつけた。




(・・・・っ!?)




僕の予想に反して
たいしたトラブルの様子はない。




(おいおい。
危ないって言ったばっかなのに・・・。)




少しホッとし、胸を撫で下ろす。




振り返ったまま立ち上がり、
しかたなく僕も
人込みのほうへと向かった。




『怜香ちゃん! どした??
また、なんかあったとか??』






・・・・。






『怜香ちゃん??』









返事はなかった。






とりあえず隣まで行ってみる。



怜香は呆然と立ちつくし、
その顔に表情と
呼べるようなものはなかった。



いや、怜香だけではない!



回りを見渡せば
同じような人は何人もいる。


なかには、誰に言うでもなく
罵声を飛ばす者や、
膝の力が抜けその場に
へたり込んでしまっている者もいる。






『いやーーーーーっ!!』

『どうなってやがんだっ!!これはっ!!』

『ぁあぁあぁあぁ・・・もぅ・・・勘弁してくれよ~。』






パニックというより
絶望的な空気が支配していた。




フッと気が付くと、
いつの間にか怜香が指を指している。
みんなが見ているほうを・・・。



隣の・・・車両??







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