時の間
『・・・なにもせずに、
ここでジッとしているより、
やれることがあるなら
少しでもなにかしたい。』




恰好の言い事を言ってはいるが、
ただジッとしていると
恐怖に飲み込まれそうなだけだ。




『なら、車掌さんに行ってもらったら??
涼君が行くことないよぉ。』




『車掌は切符確認しに出てってから
帰って来てないんだよ。』



『えっ??』



怜香は思わず振り向いて確認したが、
当然もぬけの殻。



だれも、いやしない。




『最低!! ほんと、使えない。』



僕は、
ブツブツ文句を言ってる怜香を横目に
もう一度隣の車両の確認に行く。




(・・・入っても・・・大丈夫なんだろうか。)




扉のドアから中を覗きつつ、
ふっとそんな言葉が浮かぶ。 
頭の中では、
 
「行くべきだっ!」 

ってことは解っている。
だが、いざ現実を目の当たりにすると
やはり怖気ずいてしまう。




『・・・なっ・・・なら・・・
あたしも行く・・・。』




大きな声が、車両内に響き渡った。



車内がシーンと静まり返る。



僕がこれから何をしようとしているか
なんてことは、当然周りの人たちは何も知らない。




しかし、今の一言でほとんどの人が知っただろう。




だが・・・だれも止めようとするものはいなかった。






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