時の間
僕らは同時に振り返った。



そこには、
グレーのスーツにグレーのネクタイ。
白のワイシャツに眼鏡。
白髪混じりの若干ボサボサの頭。
そして、茶色いカバン。


典型的なサラリーマンである!
つまり、その辺によくいるおじさんだ。



『・・・あっ!』



その風貌には見覚えがあった。



(さっきバックを投げてきた・・・)



『あの、あなたはさっき
バック投げて助けてくれた・・・』


僕は思わず目を見開きそして、
そっと指を指しつつ反射的に尋ねていた。




『まぁまぁ、その話は後にするとして。
で、どうするんかねぇ??
君達は行くん(隣の両)だろぉ??』


その男は、 
「行くのは当然っ!!」 
かのように訪ねてくる。

どちらが先に言い出したのか
わかったもんじゃない。


『えっ??
 あっ、まぁ。
あなたも行かれるんですか??
・・・正直何が起きるかわかりませんよ。
それでもいいなら・・・ねぇ??』



僕は、怜香のほうをチラッと見てみる。



『えっ??あたし?? 
あたしは・・・べつに・・・
・・・うん。
けど、おじさんはどうして??』


怜香は、当然気になることを聞き始める。

それは、僕も気になっていたことであった。

危険なのは、百も承知のはずである。

だからこそ、誰も隣の両に近づかないのだ。




『・・・いや・・・実は・・・妻が、一番先頭の車両に乗ってるんだよ。』



その男性は、視線をやや下の方に逸らせつつ答える。



『あっ。・・・・・。』


通りで。


『・・・行きましょう。
早く。
2両先は無事かもしれないし。
それに、早く電車も止めなきゃ!!』











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