時の間
『しかし君達、勇気あるねぇ。

私も、妻が一緒にいたら
他の人達と一緒の行動をしていたと思うよ。

そうだ。
自己紹介ぐらいしておこうかな。

私は”西田”って言う者だ。
よろしく頼むよ。』


僕が、ドアに手を掛けた時
そのおじさんは話しかけてきた。


『あっ! 僕は”涼”っていいます。』
『あたし れっ・・・れい・・・”怜香”です。』


僕達は、簡単に自己紹介を済ますと・・・


『よしっ! じゃぁ・・・行きますか。』


僕は、自分に言い聞かせるように
掛け声をかけ、一度大きく深呼吸する。


決心は鈍らずとも最初の一歩がでない。


僕は、ドアに手を掛けたまま
どうしても躊躇(ためら)われる。




ガラガラッ! ガッコンッ!!




嫌がる手を無視しつつ半ば強引にドアをあけた。


視界いっぱいに広がる座席の群れ。


群れに釣り合わない程の無人さ。




(ゴクッ。)




思わず生唾を飲み込む。



(・・・こんなところで
チンタラしていられない。
早く電車を止めなきゃ。)



そ--っと、一歩踏み出す。








(どうしてこんな事に??)









また、一歩。









(何故ぼくがこんな事している??)









そして、また一歩。









(ここは、なんなんだ??)









一歩、
また一歩と踏み出すたびに
新たな疑問、
新たな不満、
新たな不安が込み上げる。


しかし、それは同時に
まだこの場に僕が存在している
という実感にも繋がった。









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