時の間
『・・・やっぱり、だれもいないんだねぇ。
さっき、歩いて行っちゃった人も・・・。』



怜香だ。




(僕が、あの時止めていれば・・・。)





『・・・涼くん。
どうして・・・
どうして荷物だけ残ってるんかなぁ??
・・・なんだか、
さらに気味が悪いんだけどぉ。』



慎重に回りを確認しながら
怜香が話しかけてくる。



『えっ?そんなことわかんないよ。
そんなことより急ごっ!!
早く電車止めなきゃ!!』



ぼくは、そう言いながら
右手で怜香の左手首を掴み走り出す。



あまり慎重にもなっていられない。



もしかしたら、
運転士はもういないのかもしれないのだ。


だとしたら僕たちがなんとか・・・。





『あれっ??西田さんは??』


手を引かれながら怜香が聞いてくる。




『もう先行っちゃったよ!!』




僕は、そう言いながら左手で前方を指差した。


差した先では、
ちょうど西田さんが先頭車両のドアを
開けているところだった。





そう。 ここ二両目は彼とっては用はない。





妻が待つはずの一両目、先頭車両にこそ用がある。



それは、僕たちも一緒だった。



先頭車両にいる運転士。



その人だった。







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