時の間
ガタッ!

ガラガラッ!

ガコンッ!





僕たちは、ドアにたどり着き開け放つ。








願いを・・・込めて・・・。








眼前に飛び込んできた情景の中には、
動くものがあった。








・・・ただ、一つだけ。










(・・・西田さん。)






『・・・涼くん。』


『・・・うん。』






言葉にならない。







いや、したくないのかもしれない。









『・・・怜香ちゃん。行こう。』



立ち止まっていても仕方がない。



最悪の状況は覚悟していた。



だが、想像しているのと、
目の当たりにするのとでは
精神的ダメージは全く違う。



先程とは違った意味で
一歩一歩が重かった。







『・・・西田さん。』




僕は、
車両の真ん中あたりで屈(かが)んでいる
西田さんの右肩を「ポンッ」と叩いた。




『・・・あぁ。涼くん、怜香ちゃん。 
すまないねぇ。
勝手な行動して。』



『いえ。いいんです。』




それ以上の事は言えない。




西田さんは、続けた。

























『・・・妻は・・・ここに居たよ。』






















そう言うと、スーッと左手を僕に見せてきた。




静かな笑みを浮かべて。





その手には、僅かな雫とともに

左薬指にはまっている指輪と

同じ指輪が握られていた。







僕の後ろで見ていた怜香は、
声は押し殺していたが
肩を痙攣させ
顔を両手で覆い

・・・泣いていた。








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