時の間
『・・・こ・・・こわ・・・(くそっ!)
壊しましょう。』


僕は、ガチガチとうるさい顎に鞭打ち
なんとか言葉を紡ぐ。

西田さんの目の色が一瞬明るくなったのを確認すると、僕はさらに続けた。


『これ(ドア)は、最低でもさっきまでは動いていたんです。
原因はともかく例え動かないにしても、窓枠ぐらいぶち破れると思いませんかぁ
??』


『そうだねぇ。
まずは、早くこの電車を止めてここから逃げ出すのが先決だ。
よしっ!!何か割る物を探そう。』


僕は、ちょうど足元に消火器を見つけ、


『どいて下さい。これでやります!!』


そう言うと、
2~3歩下がり助走を付け、
両手で抱えた消火器を底を前にして
右肩に構え思いきり投げるようにぶつけた。





ガンッ!!




(えっ??)




ガンッ!! ガンッ!!




(・・・そんな)




ガンッ!!ガンッ!!
   ガンッ!!ガンッ!!


(なんで。)




『・・・涼君。』




ガンッ!!

(なんで。)


ガンッ!!

(なんでっ!!)


ガンッ!!

ガンッ!!

ガッ

(なん・・・ぅわっ!)






『・・・涼君。もういい。』



気付くと僕は、西田さんに両腕を掴まれていた。


『なんで。
なんで割れないんだよぉ。』


僕は、膝から崩れ落ちるようにその場にへたりこんだ。


ガラン

ゴロゴロゴロ・・・
・・・ゴン


腕の力も抜け消火器が転がっていき壁にぶつかる。


ガラスであったはずの部分は厚さわずか数ミリ。

はっきり言ってぶち破れない厚さではない。

例えアクリル板であったとしても亀裂や傷ぐらいは付くだろう。


それが、傷どころか振動すらしなかった。

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