時の間
窓から覗いた時、
蔦付きの電柱が何回も何回も
目の前を通り過ぎていく。


しかも、まったく同じ物が。


同じ巻き方

同じ濃さ

同じ高さ

の物が一定の速度で。


ちょうど、指で挟んで振った
ボールペンが残像を残して
扇のように見えるように、
電柱も薄い緑の残像を”一直線”に残す。

山道を走っているせいで緑色というものを気にもしなかったが・・・


つまり、これが怜香の言っている事を立証することになる。


まったく同じものが
繰り返し通過しないかぎり
”一直線”の残像が常に
見えはしないのだから。





電車は、進んでいる。





だが、





進んでもいなかった。









同じ所をループしているかのように
同じ景色が繰り返される。


理解もイメージもし難いだろう。


あえて例えるなら目が回った時に
似ているか・・・
景色は動いているように見えるが
決して視界から消える事はない・・・
あの感覚に・・・。


近くの景色は高速で後方へすっ飛んでいき、遠くの景色はごくごくゆっくり後方
へ進む。


そんな景色を見ると、

「今、自分は進んでいるんだ。」

と錯覚する。


つまり、日頃からの生活で
身についてしまった固定観念だ。



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