見えない罪と、月
「でもあれだと勘違いされるよ」


2つの注がれたティーカップと、クッキーを手にやってくる女性。

彼女の名前はルシェと言うそうだ。ルシェは謝りつつも、言い訳をした。

セイルはただ苦笑するだけ。警察官に任せればこんな事にはならなかったのか、と考えていた。


「ま、殴ったりしたのは謝るよ。帰って来て下着がなくなっていて、少しいらついていたしね」


「いらついていても、殴る蹴るをしたらルシェさんも危険ですよ? 僕が相手だから良かったものの、もし相手が凶器を持っていたら尚更」


ルシェは少しムッとする。女だから攻撃しちゃいけないと意味を捉えたのだろう。

紅茶を一口飲んでから、セイルは目で訴えてくるルシェに言う。


「自己防衛策は持っていても良いとは思う」


その言葉にルシェはにっこりと笑う。さっきまでの無愛想な表情は微塵もない。
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