見えない罪と、月
「じっとしているのが苦手でさ、気付いたらいろいろ身に付いていたんだ」


心の底では身に付け過ぎではないかと思いながらも、セイルは適当に相槌を打つ。

男性の力とまではいかないものの、女性の力にしては強い力。

少しずれている力と言う意味では、セリルに似ているのかもしれない。


「……って何笑っているの!? 笑うような話じゃないでしょ?」


口元が緩んでしまっていたようだ。セイルはルシェに言われて、初めて笑っている事に気がついた。


「僕の家族に似ているな、って思って」

「へえ、家族いるんだ? って当り前か。ごめん、あたし家族がいなくて」


セイルは言ってはいけない様な事を、言ってしまったような気分になる。

それを察したのか、ルシェは一言“気にしないで”と笑いながら言った。
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