見えない罪と、月
「今度は一生住めると良いね、兄さん」

「そろそろそうなっても良い筈だからな」


2人の兄弟がいた。兄の名前はセイル。歳は23,4だろうか。

亡き父親と同じ黒髪、そしてエメラルドの瞳の穏やかな青年。

弟の名前はセリル。女性のような顔立ちの17,8程の少年。

亡き母親と同じベージュの髪に、セイルと同じエメラルドの瞳。

こちらも性格は比較的温厚なものの、怪力でやや凶暴な一面を併せ持つ。

そして、この2人はフィアー一族であった。

2人共生まれてからずっと逃亡生活を続けている。その為彼らは故郷と言う物を知らない。


「この町にはイレイスがいなければ良いんだけど……」

「いないとしても、鼻が良いからすぐに来るさ」


セリルが独り言のように呟けば、セイルはやや暗めに返事をする。
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