見えない罪と、月
「おかえ……り?」


扉の音に気付き、台所から玄関へ移動したセリルは見た事もない女性がいる事に何があったのかと言わんばかりの表情。

一方のルシェはセリルの姿を見て、目を輝かせていた。


「セイルってば、こんな可愛い妹がいたのね! 可愛い服とか着せてあげたいなあ」


見ず知らずの女性に女扱いされた事に、イラッとするセリル。

だが女性の前で怒鳴るのは男してどうかと思うのか、それを堪えた。

“ああ、やっぱりか”そう言わんばかりのセイル。


「あたしね、自分じゃ絶対似合わないって分かっているのに、
何時か着たいって思って買った洋服があるの。貴女なら絶対に似合うよ!」

「あの、だからその……」


返事に困るセリルの反応をもっと楽しみたかったが、それではセリルがあまりにも可哀想なのでセイルは事実を話した。

今まで名前を呼ばなかったくせに何故、

いきなりセイルと呼び捨てにされたのかは気にしないでおく事にしながら。
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