見えない罪と、月
「ルシェさん、紹介します。弟のセリルです。セリル、この人はルシェさん。今日知りあったんだよ」

「セリルです」

「ルシェよ」


お互いを紹介された2人は簡単に挨拶をする。此処まで何事もないかのように思えた……が。


「…………セイル、今何と言ったかな? 弟? 妹ではなくて?」

「よく間違えられるけれど、セリルはれっきとした男だよ」


眉1つ動かさずに淡々を話すセイルと、少しだけ頬を赤く染めてむすっとしたセリルを交互に見てからルシェは、


「嘘おおおおおおっ!!」


町中に響き渡るんじゃないかと言うくらいの大きな声で叫んだ。

“もう慣れたとはいえ、やっぱりこれは嫌だ”と、セリルがボソリと呟く。

しかしそれは誰にも聞こえなかったという。
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