見えない罪と、月
「でも本当に勘違いされるでしょ? だってあたしから見ても可愛いもん」


答えるのが面倒なセリルはその言葉をスルーし、カレーが丁度出来た事を思い出したかのように言う。

何時もは2人だけの食卓も、たった1人が加わるだけで賑やかに……

否、彼女の場合は賑やかを通り越して騒がしいと言われても、可笑しくないのかもしれない。


「へえ、だから兄さん頬に湿布貼っていたんだ? ちょっと気になってはいたんだけどね」

「はは、参ったな」

「セリル君が返しに来てくれたなら、こんな事にはならなかったんだけどなあ……」


楽しい食卓の中、話題はやはり下着泥棒の事。

ルシェの何気ない一言に、セリルは心の中で“それは自分に喧嘩を売っているのか?”と呟いた。

そんな彼に睨まれてしまったからなのか、ルシェは“冗談だよ”と笑い飛ばす。
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