見えない罪と、月
「ほ、誉めたって何も出ないんだからね!?」


頬を赤く染めるルシェ。それは恐らくセイルが今日の中で見た、ルシェの最も女性らしい一面だろう。

やや男勝りで怪力、そして大食いな部分があってもやはりルシェは女性なのだと思い知らされる。


「ご馳走になってばっかも悪いし、セリル君のお手伝いでもしようかなっ」


照れ隠しのつもりなのか、本当にそう思って動いたのかは分からないが、

ルシェはセイルの傍から離れてセリルの元へと行く。


「ほら、手伝うよ。ご馳走ばかりなるのは嫌だからね」

「え!? 別にもう少しでおわ……」

「良いの良いの。気にしない。好意は素直に受け取らないと、ね?」


何やら楽しそうな声が聞こえる。まるで2人が最初から姉弟だったかのよう。
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