見えない罪と、月
ルシェが去った後に残ったのは普段よりも音のない静けさ。


「兄さん、あの人はまた来るの?」

「そんな素振りは見せていたね」

「1つだけ言っておくよ」


淡々とした会話。セリルは普段はあまり見せない真剣な表情で、セイルに釘を刺すかのように言う。

まるでセリルがセイルに殺し屋に頼む事だけは考えるなと、言われた時と立場が逆転しているような光景だ。


「仲良くなるのは良いけれど付き合ってそのまま結婚、はやめてね」

「分かっているよ」


彼ら兄弟はイレイスの存在がある限り、永遠に平穏に過ごす場所はない。

別れはふとした事で突然訪れる。そうなってしまった場合、

残す方も残される方も心を痛めてしまう結果となる。

それを防ぐ方法はただ1つ、深い関わりは持たないと言う事。ただそれだけ。
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