見えない罪と、月
彼らフィアー一族にとって安全な場所は何処にもない。

長く住み続けられる事が出来ても僅か3年程度だ。

期待と不安を胸に2人が辿り着いた先は“シェーマイン”と言う町。

大きくもなく小さくもない。のどかでのんびりとした町である。


「良さそうな町だね」

「前よりは、ね。前の場所は騒音が酷かったからね」


2人はまず役場を探す。この場所で住まう許可を得る為に。

これは何度行っても心を痛めるもの。2人は憂鬱だ。

フィアーの一族である彼らにとって、今目の前にいる人間がイレイスかもしれない。

本名である“リバオン”の名を告げても、それはイレイスには既知の事。

本当の名前を言ったらそれが最期。彼らはこの世界に存在は出来なくなる。
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