見えない罪と、月
依然としてヒジリの情報を掴む事が出来ずにいたセリル。

粘る期間が長引けば長引くほど、人間は諦めがつく事が多い。

しかしセリルは何故かヒジリの近い内に会えるかもと言う言葉、

そして生きたいと言う意思が余計に諦めを悪くさせていた。


(もう少しだ。もう少しで……)


セリルは何度も何度もそう言い聞かせていた。

セイルは恐らく、ヒジリと言う存在を忘れてしまったのかもしれない。

覚えているとしても絶対にセリルに協力する事はないだろう。

だからセリルは生きる為に、永住の地を求める為に、セイルの為に1人で奮闘していた。

それなのにセイルは自身の我が儘によって、赤の他人を巻き込もうとしている。


「ルシェさんに俺達の事話したの?」

「まだ。言うタイミングが掴めなくて、ね」
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