見えない罪と、月
今ならまだ引き下がれる気がすると、セリルは思った。

だがそれをセイルに言って聞かせようとは思わなかったのは、

言わなくても自分の言いたい事はセイルに既に伝わっていると思ったからだ。


「セリル、今日全てを正直に話そうと思うよ。100%、怒りを買う事は間違いないだろうね」


加えて“巻き込まれるか否かは、彼女が決める事だ”と。

命の危険に曝されてまで自分との幸せを選ぶのか、

好きだからこそ巻き込みたくないセイルの気持ちをくみ取って、別れるのか、

可能性はないとも言えないが、ルシェがイレイスの人間で自分を殺したとしても。


「僕はルシェが女性として好きだよ? 巻き込みたくもない。でも1番は彼女の意思だから」

「つまり言った後の彼女の行動がどうであれ、悔いはないって事?」

「そう言う事」


セイルはふっと微笑んだ。
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