見えない罪と、月
一方のセリルもセイルと同じ殺気を感じていた。

襲いかかってこないのは相手がセリルだからかもしれない。

セリルは人並み外れた怪力の持ち主。万が一攻撃が外れれば、

危険は自分達に跳ね返ってくるとでも思っているのだろう。

セリルは家の中とはいえその怪力ならば壁をも突き破って来る。それを恐れたのだ。

程なくして戻ってきたセイルを見て、セリルは確信する。

やっぱりイレイスがすぐ傍までやって来ているんだな、と。

恋人が出来る事は断固反対だったけれど、セイルからすれば掴みかけた幸せだったのに。

そうセリルは思った。ルシェにはきっとまだ話していないに違いない。


「セリル、すぐに出よう。退去届けはちゃんと置いたね?」

「うん……此処にも住めなくなっちゃったね。俺達、何処まで逃げれば良いかな?」


必ず訪れる逃亡は、慣れたとはいえ2人にとっては苦しい物であった。

しかしセリルはこれでセイルとルシェがバラバラになる、と安心している部分もあった。
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