見えない罪と、月
3人が行きついたのは、確実に誰も住んでいない大きな洋館。

壁に蔦が張っていて、中は幽霊が出るんじゃないかと言うくらいの空虚。


「まあ、雨を凌ぐ程度にはなるかな」

「此処に住まえる事が出来れば良いんだけど、時間が掛かりそうだね」


来ていたレインコートを脱ぎながらそんな会話をするセイルとセリル兄弟。

そんな2人に全く追い付いていけない、ルシェはレインコートも脱がずにただ呆然とする。


「2人とも一体何なの!? 借金取りから追われているとか何か?」


2人がブツブツと会話をしている所へ、ルシェはそれを遮るかの如く怒鳴るように言う。

セイルは苦笑をし、セリルは面倒だと言わんばかりの溜息を吐く。


「借金取りに追われているだけなら良かったんだけどねえ……」


場の空気とは正反対の暢気な口調でセイルが一言。
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