見えない罪と、月
「それはないよ。借金があっても、もう返済していると思う」

「ああ、それもそうだね。借りた物はちゃんと返さないと駄目だからね」

「まあ、いざとなればセリル君を担保に……って、ちがぁーう!」


ルシェは今の状況からは想像出来ない兄弟のやり取りに、呑まれそうになった。

しかし我に返って改めて2人を睨むかのように凝視する。

セリルは別の意味でルシェを睨むかのように見つめるが、セイルはまたふっと微笑み、

全てを話し始めた。全てを話した所でルシェが理解するかは分からなかったが。


「はぁ!? 何それ! あんた達、全くの無害なのに殺されそうになっている訳!?」


廃墟と化した洋館にルシェの飛ぶ鳥も一気に逃げだしそうな程の、大声が響き渡る。

セイルはばれるかも知れないからと、静かにするよう促したがそうもいかなかった。
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