見えない罪と、月
ルシェは恐らく此処で何者かに襲われた。セイルはそう確信する。

彼女はとっさにそこへ指輪を投げた。一種のSOS信号である。

だが襲ったのはイレイスなのかと言われれば、断言は出来なかった。

イレイスならば彼女は既に殺されているに等しい。

なのにそこにはルシェの亡き骸どころか、彼女のものだと思わしき血痕もない。

見付けたならばすぐに殺す。町中とは違い、此処は誰もいない場所なのだから。

そんな思考に捕らわれていたからか、セイルはすぐに判断が出来なかった。

すぐ傍にイレイスらしき存在がいたと言う事を。

その判断が鈍った所為でセイルは肩を銃で撃たれてしまう。


「…………っ!」


すぐにイレイスを探すが見つからない。セイルはただ逃げるしかなかった。

セリルのいる屋敷とは正反対の方向へと。
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