見えない罪と、月
辿り着いた先には肩から血を流して気を失っているセイルの姿。

その姿にセリルは持っていた明かりを落とす。


「ねえ、嘘でしょう?」


そのまま駆け寄りセイルの名前を何度も呼ぶが、セイルは起きない。

更に青ざめたセリルは彼の手首を手に取った。

まだ脈を打っている事を知ると、彼は安堵する。それから何度もセイルの名を呼ぶ。

何度目かの呼びかけで、セイルは漸く目を覚ます。



「兄さん! 大丈夫?」

「…………逃げろって、言ったじゃないか」

「俺1人で逃げるなんて絶対に出来ない!」


セイルの第一声がセイルを叱るもの。しかしその声は弱弱しい。
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