見えない罪と、月
町へやって来て引っ越し作業もし、疲れもピークに達している。

それでもセリルは眠りに就く事が出来なかった。町に来て初日の夜は大抵眠れない事が多い。

セイルに気付かれないように外へ出るセリル。

外の空気は室内の空気よりも澄んでいて、余計に目が冴えてしまう程。

兄であるセイルには言わなかったが、セリルはとある事を考えていた。

それを話せばセイルはひどく驚くのは勿論、嘆くか怒り狂うであろう。


(もしも噂が本当ならばイレイス全員を……)


話は数ヶ月前に遡る。セイルとセリルはイレイスに見つかり、例の如く逃げていた。

その過程で一時的に泊まった宿にて、とある話を聞く事となる。

安い宿だからなのか大きな声で話せば隣室にもその会話が届く。

静かに過ごしたい2人にとってはこれは苦痛でしかない。しかしこの時は違った。
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