見えない罪と、月
「悪いが、お嬢ちゃんの命じゃ駄目なんだよ」

「嫌だ! この人は……この人は……」


セリルとヒジリの言い合いが続く中で、ルシェはぽつりと言葉を発する。


「何だ……そんな所にいたんだ? 心配したじゃない」


セリルはルシェが何を言っているのかさっぱり理解する事が出来ない。

その言葉を投げ掛けられているであろうヒジリは、相変わらず無表情。

次のルシェの言葉にセリルは一瞬、思考がなくなるような感覚に陥る。


「セイル」


この場所にセイルらしき姿はいない。

しかしルシェはヒジリを見て、セイルの名を呼んだ。
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