見えない罪と、月
何故ならば、その会話は2人にとってはある意味有益な情報だったからだ。


「あぁっ! 全く。俺達のターゲットがあいつのターゲットでもあったなんて最悪だ」

「落ち着け。にしても、あの野郎の噂は本当だったのかよ」


2人はどうやら殺しを生業としている者達だろう。

嫌でも入って来る会話を聞けば“あの野郎”は、最近出始めたらしい凄腕の殺し屋。

性別不明だけではない。白い肌と銀の瞳と言う事程度しか、容姿の情報はない。

クライアントに膨大な金額を請求し、その成功率は100%とも噂される。

そして何故かやったと言う証拠に、その場所には必ず白い花弁と黒い羽根が必ず1枚ずつ落ちているそうだ。


「1度で良いから顔を拝んでみたいものだぜ。色白で銀の瞳なんて、絶対ふざけてる。

色白な奴は大抵貧弱って決まってるんだよ! 何処が凄腕だよ」


いらついた声が響く。その時セイルはセリルを見て何か良からぬ事を考えていると察し、


「僕達にそんなお金はないし、無謀な話だよ」


そうセリルを諭す。セリルは寂しそうに微笑み、“分かっているよ”と言う。


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