そして海の思い出を胸に
えっ?
何?
今の『ドキン』って?
その表情がすごく優しくて温かくて、鳴り続ける心臓の音に、戸惑っていた。
私は、その戸惑いを誤魔化すように、立って深々とお辞儀をする。
「昼間はどうもありがとうございました」
「まぁまぁ。当然の事をしたまでだから」
そう言って、彼は私に『座って』と目配せする。
「名前、なんて言うの?」
私が元の所に腰を降ろすと、彼はそう訊いてきた。
「東野美雪です」
私の名前を聞いて、彼はしばらく何かを考えているようだった。