せめてもの抵抗は翌年、周りの猛反対を押し切り、当時人気のあった映画女優を妻にしたことだ。

何であれ、私はもう疲れた。
いいように担がれるのは、もうたくさんだ。
私の意志など、あの世界では全く無視される。
私はそれを、イヤという程思い知らされてきた。
政治とはすなわち、駆け引きの世界だ。
先手を打つべく常に相手の出方を窺い、時には詭弁を弄し、また大博打に打って出ることもある。
とにかく、相手の裏をかいて出し抜いた者が勝ちなのだ。
まるでサバイバルの世界。
実はそれは、私の最も嫌いとするところだった。
しかし私は、これまでに幾度となくそういうサバイバルの場に臨まされてきた。立場上、拒否することは許されなかった。 ああ、私はこれまでにそうやって、何人の人間を谷底へ蹴落としてきたことだろう!
その結果私は、野党の連中が憧れる首相の座に就いた。いや、就かされた、と言ったほうが当たっているかな。
その後二回、計三回、私はあの椅子に座らされた。 すべては、「家柄」のなせる業だった。
首相就任中、私は酒をのむ時になぜ、手製のお猪口を用いていたか、わかるかな?
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