「私は器が小さい」、つまり「首相の器ではない」、そういう意志表示のつもりだったのだよ。
しかし、それに気付いた者は誰一人としていなかったようだね。
私の手にする手製のお猪口を、美辞麗句を並べたてて褒め倒すばかりで。
全く、連中の毎度の見え透いた追従にはヘドが出そうになる。
誰一人として、“大政治家”なるの者の本当の心の内など、わかってやしない…。

結局、周りの者たちは私の方を向いてはいても、私を見ているわけではない。その背後にある「家柄」、そして私が握っている権力を見ているにすぎないのだ。 誰も、私のことなど見てはいない。
それは、私は存在していないのと同じことなのだ。それでは、私がこの世にいる意義がないではないか。ならばいっそ…。
暗闇の中の一本道は、まだまだ続く。
続くかぎり、私は歩き続けなければならない。
先は見えない。 何も見えない。 だから、見えてくるまで、私は歩き続ける。
この暗闇を抜けた先には、きっと新しい人生が待っているはずだから。
〈完〉
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