ラブソングが聴こえる

渉とHARU

「へぇ~。良かったじゃん。」


そう言って私の部屋でタバコをふかしながらテレビを見てくつろいでいる


茶髪に二重だけど細い目の少し無精髭の生やしたこの男は


私の彼氏の”渉”だ。


渉も私と同じで俳優を夢見て田舎から上京してきた上京組。


最近では、その演技が認められちょこちょこチョイ役がもらえては来てるがそれでも厳しいこの業界。


もらえる役なんてドラマのほんのワンシーン。


役名なんてないその他大勢が多い。


まだまだ無名の俳優だ。


渉との出会いはドラマの打ち上げだった。


私はそのドラマに仲の良いタレント仲間が出演していたから無礼講で呼ばれた。


高級な会員制のバーを貸しきってかなり派手にやっていて私以外も出演者の関係者や友人なんかが何人か来ていた。


最初は行くのを嫌がっていたんだけど社長に


『どこで仕事がもらえるコネが見つかるか分からないから。』


とタレント仲間の好意を無にするわけにもいかず半ば強引に行かされた。









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