ラブソングが聴こえる
「遅い…。」


HARUがイライラしながらボソッと口にした。


周りの女優さんや俳優さんは呆れ返っている感じだ。


スタッフはHARUの不機嫌なオーラを感じ取ってソワソワと所在なく動き回っている。


いくら忙しくたって時間厳守。


それはどの業界でも一緒だが、この業界は特にこれが重要視される。


彼女は業界では遅刻魔で有名らしい。


それでもこうやってずっと起用されているのは、彼女がこの業界に多くのコネクションを持っているからだろう。


何よりこのHARUの彼女だということでかなり優遇されている。


今や人気最高潮のHARUが所属しているのは、大手のレコード会社。


その1番の大黒柱はHARUのバンド。


彼らが”NO”と首を振った次の日には、業界では生きていけないと言われるぐらいだ。


だから、少々傲慢なことを言われても対応するし、彼らの身内に非があることでも誰も本人を責めない。

たぶん今この空間で一番発言権があるのは、大御所と言われる俳優でもプロデューサーでもなくHARUだろう。


だから周りのスタッフはHARUのご機嫌取りには、余念がない。


さっきからスタッフはHARUに近づいては色々と耳元で囁いたり、世話をやいているのだが、


HARUの機嫌は一向に直りそうにない。











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