永恋


「…ぱい……尚稀先輩っ!!」



「おわっ、びっくりしたー。ん?」



「ん?じゃないーーー!!!!なに、ぼーっとしてんですか!?」



「へ?今、俺ぼーっとしてた?」


そう言って誤魔化したけれど、彼女が納得していないのは一目瞭然だった。



でも、他の女に見とれてました、なんてばか正直に言えねーし。



「まっ、尚稀先輩がぼけーーっとしてるのは、いつもの事ですけどねっ」



茶化してきた彼女に「おいっ」と突っ込みを入れ、頭をわしゃわしゃと撫でた。



ななせは、鋭かったから、たぶん気付いていたはず。



だけど、追求しなかった。



最初から、最後まで、賢くて優しかった、ななせ。



君の優しさに恋をし、君の優しさに甘え、



君の悲鳴に気付かなかった、愚かな俺。



*
< 7 / 12 >

この作品をシェア

pagetop