機械魔法伝
「しょうがないなー…。僕が何とかするよ」


 そう言うと、ガイは懐からおもむろに木製の杖を取り出した。

 よくアニメでありそうな飾りっ気のある杖では無く、高級な木材で作られたシンプルな杖だった。

 ガイは何の前触れも無く、簡素にこう言った。


「火炎」


 …ガイがそう言うと、杖の先端から小さな炎が出てきた。まるでたいまつのようだ。小さい炎だが、ライはこれで十分暖かくなったと、満足した。


「…今のって魔法?」


 前に聞いた事だが、ガイは呪術師である。何故、呪術師のガイが魔法を使えるのだろうか…


「今、僕が魔法を使った事に疑問をもったでしょ?その通り。僕は魔法を使ったよ。…実は呪術師は魔法使いより位が高いから、魔法ぐらいちゃんと身に付けておかないといけないんだ。魔法都に行っても、呪術師は数えるぐらいしかいないよ」


 ガイはそう言うとニコッと笑ってみせた。今までの腹黒い笑みとは違い、ガイの本心からの笑みだ。…どうやらガイは自分が呪術師である事を、とても誇りに思っているようだ。

 ライはその事を聞き終えると、もう1つ疑問に思っていた事をガイに告げた。


「…思ったんだけどさぁ。なんでガイは魔法の名前しか言わないのか?普通はちょっとした詠唱ぐらいするのに…」


 するとガイは、少し不機嫌そうな顔をした。


「そんな事をするのは面倒くさいからさ…。魔法を念じてその名前さえ言えば魔法は勝手に発動する。…簡単に言ったら、1000円の商品を1000円札一枚で出すのと、100玉十枚で出すのとの違いだよ」


 100円玉十枚じゃなくて、500円玉二枚でも良いのではないか…。ライはそう思ったが、魔法の事については全く知らなかったので、何も言わない事にした。



 
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