機械魔法伝
第8説
 フメリエ家からの帰路途中。

 ガイはあの老人に杖を当てられた方の手―――右手を眺めていた。

 見ると右手には謎の黒い紋章が掘られており、痛みは感じないのだが、かなり目立つ程のものだった。

 ガイはそれをキルに見られるのが嫌だったのか、右手を皮の手袋でおおってしまった。


「…何やってるの?」


 キルはガイの謎の行動に気づいたのか、手袋をはめているガイの右手をまじまじと見る。

 それに気付いたガイは、右手をサッと後ろに回した。


「寒かったから手袋をつけてただけだよ」

「なんで右手だけ?」


 キルはガイに近付き、さらに右手を見ようとする。

 しつこい奴だ…そう思ったガイは、何も無い左手にまでも皮の手袋をはめた。


「僕は寒がりなんだよ。氷河に行った時も君と違って寒がってただろ?」

「うーん…なんか納得しないけど…まぁ良っか!」


 キルはガイの前方をスキップしていった。

 しばらくこの手袋は取れないな…ガイは自分の両手を恨めしそうに見た。

 
< 38 / 49 >

この作品をシェア

pagetop