『短編』思惑〜オモワク〜
「もう一緒にはいられない」
聡は敦子の瞳を真っ直ぐ見て言った。
「ちょっと、待ってよ……」
敦子は動揺する。
結衣のことは京香からも聞いていた。
少なかった睡眠薬の量。
まるで誰かに『見つけて』と言わんばかりに開いていたドア。
--死ぬつもりなんて無かったはずだ--
しかし、その言葉を敦子は飲み込んだ。
聡は、信じて疑わない。
結衣が『自分のために死のうとした』と。
「ごめん敦子。オレは結衣のこと放っておけない」
--それが、あの子の作戦よ。あなたはあの子の作戦に嵌ったんだわ--
敦子の言葉は音にならなかった。
わかっていた。
声にしたら本当に--
永遠に聡は、戻って来ない。
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