『短編』思惑〜オモワク〜
 

「……敦子は、どうしてる?」


病院の玄関へ向かう途中、聡は京香に聞いた。


「あなたが、それを聞くの?」


「……聞く権利なんか無いってことは、わかってる」


「そうね」


「……」


「敦子は、泣いてるわ。毎日」


「……」


「でも、大丈夫よ。敦子には私がついているから」


「よかった」


「聡さん」


歩く足を止めて、京香は聡に向き直った。


「貴方は、『本当に好きな人』の心配だけしていればいいのよ。さっきもいったでしょう?これ以上、敦子を苦しめないで」


「京香ちゃん……」


「敦子だけじゃないわ。結衣ちゃんだって苦しむことになるのよ?」




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