『短編』思惑〜オモワク〜
「ねえ、聡さん」
少し柔らかくなった雰囲気に、京香は少しためらいながら聞いた。
「どうして、敦子じゃダメなの?結衣ちゃんは確かにすごく可愛いらしいけれど、敦子は頭がよくて、そして美人で……それに、聡さんのことを本当に想っているわ」
「敦子がダメって訳じゃないんだ」
聡は言った。
「ひとりで頑張ろうとする敦子を愛しいと思った。守りたいと思ったよ。だけどオレは……もっと甘えて、頼ってほしかったんだ」
真剣な表情の聡の瞳を、京香は見つめる。
「オレを頼ってくれる結衣のことを放っておけないんだ」
「……素直になれない女だっているのよ」
京香は小さく呟いた。
「え?」
聞き返す聡に、京香は笑顔を見せる。
「ううん、なんでもないの。もうここでいいわ。結衣ちゃんのところへ早く戻ってあげて」
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