『短編』思惑〜オモワク〜
幸せを願う女
屋上に残された敦子は、携帯電話を見つめていた。
確かに今、わたしは周りから『結衣を追い詰めた女』だと思われている。
そんなわたしが京香のやったことを誰かに言ったところで、信用されることはないだろう。
でも……。
敦子は携帯電話の『停止』ボタンを押した。
今録音した京香との会話を聞かせたらどうなる?
聡は、決して京香を赦しはしないだろう。
『結衣を殺した女』
京香を見る周りの目は冷たいものになるだろう。
そしてわたしは……
『純粋に聡の幸せを願う女』の役割を、完璧に演じてみせるのだ。
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