雪やこんこん
≪1≫




人を待つって、そんなに楽しいことだろうか。




「お先に失礼しまーす」

「おう、お疲れさん」


時間さえあれば、居酒屋でバイト。
店の掃除から始まって皿運び、買い出し、食器洗い等々。

報酬の分だけこき使われる。一人暮らしの大学生って、こういうもん。


実家が金持ちだと、逆に仕送りを頼りたくない。世間一般のお坊ちゃん達はどんなもんなのか知ったこっちゃないが、少なくとも俺はそういう人間。



俺はいつものように店長に挨拶をして、店を出た。


「…さむ。」



季節は真冬。
午後10時を回った今、辺りは真っ暗。寒さも頂点に達して道には霜を降らし、ヒトの呼吸には白い煙が付き纏う。


さっさと帰って湯船にでも浸かろう。と、駆け出す寸前。



「始さんっ!」



いつものように、背後から自分の名前が呼ばれる。俺は溜息を漏らしながらも律義に振り返った。


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