雪やこんこん
「…ちょっと、何してんの」
振り向かなくても自分を引き止めたのが誰だか分かっている。だとか、正直、気に食わないんだけど。
『いつものように』だなんて、日常化しちゃってるのも不服なんだけど。
「始さん、お待ちしてました!」
「別に待たせた覚えはないんだけど」
俺は、満面の笑みを浮かべる彼女にそれだけを言うと自宅の方向に足を進めた。
「えぇっと、…じゃあ、私が勝手に待ってました!」
「いや、別に言い換えて欲しい訳でもなくてね」
彼女は数ヶ月前に突如、俺の目の前に現われた得体の知れない少女だ。
心当たりもないのに何故か、懐かれてしまったようだ。