雪やこんこん




俺がこの居酒屋のバイトを終えて店から出ると、必ず彼女に遭遇してしまう。
『遭遇』というか、彼女はいつも俺を『待っていた』と言う。


こんな身も縮みそうに寒い中?

見たところ、中学生か高校生ぐらいの少女が?



──どうして、俺なんかを待つんだろう。



「物好きだね」


彼女に対して、突き放した言葉を言ったって無意味。理屈を並べたって、彼女の前ではそれら全てが無効になってしまうってことを、ここ最近で学んだ。



じゃあ、どうしろと?


そんなの、どうしようもないじゃないか。



「物好きなんかじゃないです。始さんみたいな方を好きになるのは、いわば当然です!」

「…ふうん。ああそう」


別にわざわざ俺なんかに惚れなくたって、そんな可愛い顔してんなら学校でも男なんか次から次でしょ。




そんなこと言ったら、また五月蠅いだろうから言わないけどね。



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