雪やこんこん
「始さん。今日のまかないは何でしたか?」
「チャーハンとワンタンスープだけど」
「わぁ、良いですねぇ。美味しかったですか?」
「…まあね」
「そう言えば、始さんの好きな食べ物をお聞きしてませんでしたね」
了承なんかしてないのに、勝手に付いて来る。それさえも、もう慣れてしまっていて動じることはない。人一倍ヒトに対して神経質な俺なのに。慣れとは恐いもんだ。
「ていうか、何で俺の名前知ってんの」
「あ…。以前、女性にそう呼ばれているのを聞きました」
彼女が『女性』を強調したのには、何か特別な意味があるのだろうか。
「ストーカーみたいなこと止めなよ」
「えへへー」
すでに、都合が悪くなると鼻をすすって誤魔化すだとか、そんな彼女の癖なんかも見付けちゃってる自分が嫌だ。