君がいた…
お互いのボールを取り合いながら

延々と走り続ける2人…

その様子を部員達は

自分達の練習を止めて見ている。

「宏史(あいつ)…
上手いんだ…」

一人の部員がつぶやいた。

他の部員達も 同じ事を思っていた。

「そりゃそうだよ。
元 北中のエースだからな。」

いつの間にか

部室から出て来ていた佐々木が

少し自慢げにそう言うと

「まじで!?」

先程の部員が驚きの声をあげた。

【北中のエース】


サッカーをしている学生なら

県内では知らない者はいないというほどの有名人。

名前は知らなくても

【北中のエース】

といえば、どんな存在なのか分かる。

まさか

違う意味で目立っている宏史が

そんな有名人だとは…

部員達の驚きは

そんな所からきているらしい。

そして

宏史の動きを見ているうちに

なぜか

少しずつ わだかまりが溶けていっていた。
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