君がいた…
宏史は、彼女の背中を追う。

その目線の先に

俊樹が自分の方へ歩いて来るのが見えた。

彼女から目を反らし

一つ小さなため息を吐くと

俊樹の方へ歩いて行った。

「誰?今の…」

開口一番に俊樹が聞いた。

「さあ?…でも…舞の知り合いじゃね?」

俊樹からまた

彼女へと目を移して答える宏史。

「え?なんで分かんの?」

即座に聞き返す俊樹に宏史は

少しめんどくさそうに

「舞の居場所 聞いてたからだよ。」



言い俊樹の横を通り抜けようとしたその時―

「一目ボレ?」

宏史の耳元で俊樹がつぶやいた。

その一言に

宏史は俊樹を見返したが

すぐに目を反らせ

「…なわきゃねーだろ…」

と…

ドスをきかせた声で言うと

ボールを抱えたまま

元いた場所に戻って行った。
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