君がいた…
「亜…紀…?」

うつ伏せで 顔だけが横を向いている亜紀

その顔を見た俊樹は

そう言うと

震える手で 亜紀の頬を触った。

その様子を見た宏史は

すぐに立ち上がり

2人の元へ駆け寄ると

俊樹の体を押し退け

亜紀を見た。

「うそ…だ…ろ…」

亜紀の瞳孔は開いたまま

頭からは 血がドクドクと出ている。

「なんで…どうして!」

宏史は そう叫びながら
着ていた白いコートを脱ぎ

亜紀の頭に当てた。

ものすごい音で 近所の住人が公園へと集まって来た。

「誰かっ!救急車…
救急車呼んで下さい!…早く!」

俊樹の叫びを聞いた 一人の住人が

急いで家に戻り 救急車を呼んでくれた。

その間―

亜紀の頭に コートを当て続ける宏史―

白いコートは みるみるうちに

赤く染まっていく…

「なんで 俺突き飛ばすんだよ…
俺が助かったって…
亜紀が助からなきゃ 意味ねーじゃねぇか!」

宏史の悲鳴に近い叫びは
辺りに悲しく響いた。
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