君がいた…
倉沢の言い分に

宏史は 大きく首を横にふり

「すぐ…隣にいたのに…守れなかった…
なにも…できなかった…。」

ポツリポツリと語る宏史

「だから それは…」

倉沢は 懸命に否定しようとする。

「亜紀は…守ってくれたのに…
俺は…」

宏史の頭の中に

あの事故の瞬間が
スライドのようによみがえる…

「血が…
頭から いっぱい血が…
亜紀…亜紀…
なんで…どうして!」

体 全体を震わせ

青ざめた顔で叫ぶ宏史

倉沢は

音を立てて イスから立ち上がり

宏史の元へ駆け寄ると

きつく抱きしめた。

そして…

「そこに倒れてるのは
お前だったかもしれない…。」

宏史の耳元で

優しく語る。

「今 ここで泣いているのが 亜紀だったかもしれない…」

体を震わせながら

じっと話を聞く宏史
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