治樹と未来
そして男は、少しづつ話し始めた。

彼は3年前に彼女を交通事故で亡くした。

その日は、彼の誕生日だった。

彼女は彼を驚かそうと思い、家の前で彼の帰りを何時間も待っていた。

その日は真冬で、そして大雨。

それでも彼女は屋根の下でずっとずっと待ち続けた。

朝になっても彼は帰ってこなかった。

彼女はようやく彼にメールを入れた。

【何してるの?】

彼は友達に誕生日パーティーを開いてもらっていた。

そして、彼女が待っている事を伝えると彼は驚き、そしてすぐに帰ると言った。

彼女は、早く会いたい気持ちで駅まで彼を向かえにいった。

その時だった。

彼女は駅に向かう途中、車に跳ねられ救急車に運ばれた。

即死だった。

男は、自分が殺したようなもんだと、ずっと自分を責め続けてきた。

そして毎年命日になると、彼女と出会ったこの倉庫で、

もう二度と現れない彼女をずっと待っているという。

私はそれを聞き終わると、涙が止まらなかった。

そして男を包み込むように優しく抱きしめた。

【もうこんな事やめなよ。こんな事しても彼女はきっと悲しむだけだよ】

【分かってる。だけど悲しさを紛らわすにはこれしかないんだよ…】

・・・・・・・・・

【私があなたを守ってあげる】

自分の言ったこの言葉で、私は気づいてしまった。

私、この人が好き。
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