星の涙
「言葉遣い悪いよ」

少女はふんっと鼻を鳴らしてそっぽを向いた。

巧は言葉くらいでこんなに怒る彼女を理解できなかった。

巧は溜め息をつくと手で追い払う仕草をしながら彼女に言った。

「わりぃけどどっか行って。あんたに付き合ってられる程俺暇じゃないから」

無意味に頭を掻く。

次に少女を見た時、彼女はどこにもいなかった。

「な……消え……た……!?」

巧の言葉通り消えたのだ。

たった今まで少女がいたことを証明するものは何もない。

聞こえるのは虫の音と、風で掠れる木の葉の音だけ。

360度全て見回すが、やはり少女は見当たらない。

すると風に乗って少女の声が聞こえてきた。

「君が消えてって言ったんじゃない」

どこかに隠れているのだろうか。

消えろと言ったが隠れろとは言っていない。

声だけしか聞こえない少女の存在が急に怖くなり、巧は近くに転がっていた木の棒で草陰をつついてみた。

「そこに私はいないよ」

くすくすと聞こえてくる少女の笑い声が巧の恐怖心をかりだたせる。

「出てこいよ!!」

木の棒を地面に投げつけると、巧は宙に向かって叫んだ。
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